私にとってあなたは大切です
退居の決まった方、いちおうNさんとしておきましょう。
Nさんはガンコおやじというかヘリクツおやじというか、あまのじゃくなところがあったり。
そして機嫌が悪くなったり大きく混乱したりすると、ちょっと対応が難しかったり。
われわれスタッフも、何度か‘手を焼いた’ようなこともありました。
ある日、後輩のひとりが私に聞きました。
「Nさんのこと、好きですか?」
私はしばらく考えて、
「うちのホームに入ってくれたのだから私にとって大切な人だとは思う。でも、好きかどうかはわからない。」
それからしばらく経って、退居が決まって。
今、私はNさんがいなくなることに寂しさを感じているし、
今は好きなんだと思います。
もし退居する話がなくなったら、ホッとして、喜ぶような気がします。
考えてみれば、何かを好きになるのには、少し時間が必要なのかもしれません。
好きかわからないと言ったあとにも、Nさんとの関わりが上手く行ったり、行かなかったり、いろいろでした。
でもそんな一つひとつの思い出を重ねていくうちに、
気が付けば好きになっていたのだと思います。
介護において、相手に伝えるメッセージには大事なものが3つあると言われています。
①私はあなたに会えてうれしい
②私にとってあなたは大切な存在です
③あなたのために私が出来ること教えてください
このメッセージが伝えられたり、伝えられなかったりして、
そして最後には相手を好きになっていくんだと思います。
お別れになるまで、このメッセージを伝え続けていきたいと思います。